オレンジ・キャンディーズver.2.0.」(2000)では、ぼくはロス中を走り回り、考えうる限りのエスニック・スーパーをめぐって世界各国のオレンジキャンディーを集めてきた。味も見た目もあまりにさまざまなオレンジの飴たちはコンピューターでスキャンされて、四枚の大きなデジタル写真になった。一枚はキャンディーの袋や箱や缶、一枚はその裏側、一枚は包み紙、そして最後は剥き出しのキャンディーである。同じ銘柄のキャンディーは、それぞれのプリントのグリッドの中のおなじ箇所に配置されている。たとえば、「ライフセイバー」というアメリカのキャンディーは4枚のパネルのなかで、必ず一番上の列の一番左に置かれており、「なっちゃん」という日本のキャンディは、下から2列目の左から4番目である。グリッドのなかにブランクのあるパネルがあるのは、ある特定の銘柄のキャンディーは、個別に売られていて袋や缶がなかったり、一つの袋にはだかでまとめて入っていて包み紙がなかったりするためである。こうして4枚のパネルは視覚的にも観念的にも関連づけられている。さらにぼくはすべてのキャンディーを砕いて粉末状にして、小さいガラスの瓶に入れたものを用意した。それはオレンジキャンディーに姿をかえた、ロスアンゼルスという都市の「醍醐味」でもある。

粉末になったオレンジキャンディーたちは甘味料と酸味料と人工着色料と香料があわさったものでしかないし、まさしくそんな味と香りしかしない。けれどもそれが作られた過程やそれが辿った旅路を思い、光沢ある写真紙にプリントされた宝石のような飴たちを見るとき、僕らの時代は確かにどこか狂っているけれど自分なりにそれを理解することはきっと可能なのだ、そんな気がしてくるように思う。