「レストラン・シリーズ」(2000-2003)は、ロスアンゼルスに数ある人気エスニックレストランの風景をきりとったものである。これらのレストランは、たいていはある特定の移民達のコミュニティーのなかにあって、祖国の食材を祖国のレシピで、しかも安価に提供している。そういったレストラン側の努力はおのずと特定の客層、つまり同じ文化を共有するコミュニティーの人々に評価され、口コミで評判は広がってゆく。結果として、どのレストランもロスアンゼルス圏にありながらまるで外国である。

しかしそこはレストランであるから、「場違いな客」が来ても決して追い返したりはしない。むしろ店の人も他の客も自分達が美味しいと思うもの(しかし「外国人」にはきっとその美味しさは分かりづらいであろうと思われるもの)に対して、その人がどんな反応をしめすか興味津々に眺めている、ということのほうが多い。このシリーズの写真はそんなささやかな文化交流の瞬間がテーマである。混み合ったレストランのなかに1人、どうもそぐわない感じだけれど何となく楽しそうな人がいる。ロスアンゼルスという都市のもろさと優しさ、その多民族主義の現実がなんでもない風景に溶け込んでいる。